DEVELOPER INTERVIEW
開発者が語る、
"巾着レザーバッグ"ができるまで
HushTugのものづくりにおいて大切にしているのは、見た目の美しさだけではありません。
日常で自然に使えること。
長く愛用できること。
そして、シンプルでありながら、持つ人の装いにさりげなく馴染むこと。
今回ご紹介するのは、HushTugの中でも独特の存在感を持つ「巾着レザーバッグ」です。
ラフに持てるのに、どこか上品。
小ぶりながらも、革ならではの存在感がある。
一見するとシンプルなバッグですが、完成までには素材選びやサイズ設計、金具の選定、内装の使いやすさなど、さまざまな試行錯誤がありました。
今回はデザインを担当した中島に、巾着レザーバッグが生まれるまでの背景や、細部に込めたこだわりについて聞きました。
中島 健太(Kenta Nakashima)
HushTug製品企画部 部長
【経歴・設計思想】
高校卒業後、地元の製造工場にてラインオペレーションおよび品質管理業務に従事。
その後、アパレル・レザー業界未経験の状態から、レザーブランド HushTug の立ち上げ・運営に携わる。現在は、巾着レザーバッグをはじめ、多くの商品企画・デザインを担当している。
日本らしさを感じるアイテムを作りたかった
── 巾着レザーバッグの企画は、いつ頃から始まったのでしょうか。
中島:
企画が動き始めたのは、2024年の初め頃です。発売が2025年2月だったので、完成までおよそ1年ほどかかっています。
最初のきっかけは、社内で「日本らしさを感じるアイテムを作りたい」という話をしていたことでした。
当時は、日本の暮らしや文化を感じられるプロダクトを、HushTugらしくレザーアイテムとして表現できないかと考えていました。その中で出てきたアイデアのひとつが、巾着バッグです。
ただ、最初から今の形が決まっていたわけではありません。
「巾着らしさとは何か」
「革で作るなら、どんな形が自然なのか」
「HushTugらしいシンプルさと、どう両立させるのか」
そういったことを考えながら、少しずつ方向性を探っていきました。
一般的な巾着型を、そのまま革に置き換えなかった理由
── 巾着バッグというと、紐で口元を絞るタイプを思い浮かべる方も多いと思います。
中島:
そうですね。巾着と聞くと、紐を引いて口元を絞る形をイメージされる方が多いと思います。
もちろん、そうした一般的な巾着の構造も検討しました。
ただ、革で表現する場合、布の巾着とはまったく違う難しさがあります。
革には厚みやハリがあり、素材そのものに存在感があります。
その良さを活かしながら、無理に口元を絞ろうとすると、革本来の美しい表情が損なわれてしまうことがあります。
「HushTugとして作るなら、単に布の巾着を革に置き換えるのではなく、革という素材に合った巾着バッグにしたい」
そう考えました。
そのため、一般的な紐で絞る構造ではなく、革の立体感や丸みを活かせる形を目指して設計していきました。
目指したのは、袋のようなやわらかさ
── 現在のようなワンハンドルの形には、どのようにたどり着いたのでしょうか。
中島:
巾着バッグらしさを考えるうえで大切にしたのは、袋のようなやわらかさです。
巾着には、かっちりしすぎないラフさや、持った時に自然に生まれるたわみがあります。
その雰囲気を、革のバッグとしてどう表現するかを考えました。
一方で、革のバッグとしての上品さも残したかった。
カジュアルになりすぎると、HushTugらしさから少し離れてしまいます。
そこで意識したのが、ふっくらとしたボディの丸みと、持った時に生まれる自然なドレープ感です。
メンズに寄りすぎない、上品なバランス
── デザインを考えるうえで、特に意識したことはありますか。
中島:
巾着バッグは、形によって印象が大きく変わります。
カジュアルに見えるものもあれば、少し可愛らしく見えるものもあります。
逆にメンズらしさを強く出しすぎると、日常の服装に合わせづらくなることもあります。
HushTugの巾着レザーバッグでは、男性が持っても自然で、かつ上品さも感じられるバランスを大切にしました。
革のバッグは、どうしてもかっちり見えやすいアイテムです。
そこに巾着の要素を取り入れることで、少し抜け感のある、日常使いしやすい雰囲気を出せると考えました。
シンプルな服装に合わせても、バッグだけが浮かない。
でも、手に持った時にはさりげなく印象に残る。
そういった存在感を目指しています。
金具は、できるだけ主張しないものを
── 持ち手を通す金具も印象的です。どのように決めたのでしょうか。
中島:
金具は、バッグ全体の印象を大きく左右する部分です。
今回のバッグでは、金具を目立たせるのではなく、革の質感や丸みのあるフォルムを引き立てる役割にしたいと考えました。
そのため、まず大切にしたのはサイズ感です。
ハンドルを自然に通せる幅がありながら、大きすぎて存在感が出すぎないものを選ぶ必要がありました。
また、角張った金具だとバッグ全体のやわらかい印象と合いにくくなります。
そこで、少し丸みのある形状のものを選んでいます。
色についても、シルバーやゴールドのように強く主張する色ではなく、黒のレザーに自然に馴染むマットブラックを採用しました。
金具が主役になるのではなく、バッグ全体をさりげなく引き締める。
そのバランスを大切にしています。
あえて、必要なものだけを持つサイズに
── サイズ感はどのように決めたのでしょうか。
中島:
巾着レザーバッグでは、大きすぎないサイズ感を大切にしました。
このバッグは、荷物をたくさん入れるためのバッグというよりも、必要なものだけを持って軽やかに出かけるためのバッグです。
コンパクトな財布、スマートフォン、キーケース、イヤホンなど。
日常のちょっとした外出に必要なものを、無理なく持ち歩けるサイズを目指しました。
大きくすれば収納力は増えますが、その分、巾着バッグらしい軽さや、手に持った時のバランスが損なわれてしまいます。
小ぶりだからこそ、装いに自然に馴染む。
そして、必要なものだけを入れることで、バッグそのものの軽やかさが活きる。
そんな使い方を想定して設計しています。
見た目以上に難しかった、ハンドル部分の調整
── サンプルができてから、特に調整した部分はありますか。
中島:
ハンドルを金具に通す部分の幅と厚みは、かなり丁寧に調整しました。
この部分は、見た目の印象だけでなく、実際の使いやすさにも関わる重要な箇所です。
革は折り返したり重ねたりすることで、想像以上に厚みが出ます。
特にハンドル部分は、しっかりとした強度を保ちながらも、金具に自然に通せる厚みに整える必要がありました。
そこで、革の厚みを部分的に調整し、通しやすさと見た目の美しさを両立できるようにしています。
ただ薄くすればいいわけではありません。
薄くしすぎると頼りない印象になってしまいますし、革らしいしっかり感も失われます。
強度、使いやすさ、見た目のバランス。
そのすべてが自然にまとまるよう、細かく調整しました。
内装ポケットは、使いやすさを最大化するための配置
── 内装のファスナーポケットは、かなり上の位置についていますね。
中島:
はい。このバッグは小ぶりなサイズなので、内装ポケットの配置にも工夫が必要でした。
一般的な位置にポケットを付けてしまうと、ポケット自体の深さが十分に取れなかったり、物の出し入れがしづらくなったりします。
そこで、見付けのすぐ下にファスナーポケットを配置しました。
この位置であれば、限られた高さの中でもポケットの容量を確保できます。
また、ファスナーを開け閉めする時の使いやすさも考えています。
ポケットの上部がしっかり固定されているため、ファスナーを引いた時に裏地が動きにくく、スムーズに開閉しやすい仕様になっています。
小さなバッグだからこそ、内装の使いやすさはとても大切です。
限られたスペースの中で、できるだけ実用的に使える配置を考えました。
── ポケットには、どのようなものを入れる想定ですか。
中島:
ファスナーポケットには、イヤホンやキーケースなど、貴重品を入れるイメージです。
もう一方のオープンポケットには、スマートフォンやモバイルバッテリーなど、すぐに取り出したいものを入れていただけます。
小さなバッグなので、ポケットを細かく分けすぎるとかえって使いづらくなります。
そのため、必要なものをきちんと入れられるサイズを確保することを優先しました。
黒の革に映える、ベージュの裏地
── 裏地の色は、なぜベージュにしたのでしょうか。
中島:
ベージュの裏地は、黒のレザーとの相性がとても良いと感じています。
黒一色でまとめると、全体として引き締まった印象にはなります。
一方で、内装にベージュを入れることで、バッグを開けた時に少しやわらかい印象が生まれます。
巾着レザーバッグは、かっちりしすぎず、日常に自然と馴染むバッグにしたかったので、内装にも少しやわらかさを持たせたいと考えました。
黒のレザーとベージュの裏地。
そのコントラストも、このバッグらしさのひとつです。
革に求めたのは、柔らかさだけではなく“もっちり感”
── 革の選定では、どのような点を大切にしましたか。
中島:
巾着レザーバッグでは、革の質感がとても重要です。
柔らかければ良いというわけではなく、革らしい厚みや立体感がありながら、手に持った時にふっくらと感じられる質感を大切にしました。
このバッグは、丸みのあるボディや自然なドレープ感が特徴です。
その表情をきれいに出すためには、革にある程度のハリが必要です。
一方で、硬すぎると巾着バッグらしいやわらかさが出にくくなります。
そのため、しっかり感とやわらかさの中間にあるような、もっちりとした質感を目指しました。
革の表情がバッグ全体の印象を決める。
そう考えて、素材の質感にもこだわっています。
シンプルに見える形ほど、細部の積み重ねが大切
── 完成までを振り返って、どのようなバッグになったと感じていますか。
中島:
巾着レザーバッグは、ぱっと見た時にはとてもシンプルなバッグだと思います。
ただ、シンプルだからこそ、少しの違和感が目立ってしまいます。
ハンドルの太さ、金具の大きさ、ボディの丸み、内装ポケットの位置、裏地の色。
ひとつひとつは小さな要素ですが、それらのバランスが整って初めて、自然に見えるバッグになります。
今回のバッグでは、巾着らしいやわらかさと、HushTugらしい上品さをどう両立するかを大切にしました。
HushTugらしい巾着バッグを目指して
巾着レザーバッグの開発で大切にしたのは、一般的な巾着バッグをそのまま革で作ることではありません。
革という素材の特徴を活かしながら、巾着らしいやわらかさや抜け感をどう表現するか。
そして、HushTugらしいシンプルさや上品さをどう両立するか。
その問いに向き合いながら、素材、金具、サイズ、内装の仕様をひとつずつ検討し、今の形にたどり着きました。
ラフに持てるのに、どこか品がある。
小ぶりなのに、必要なものはきちんと入る。
主張しすぎないのに、装いの印象をさりげなく変えてくれる。
巾着レザーバッグは、そんなバランスを大切にして生まれたバッグです。
日常のちょっとした外出に。
旅行先でのサブバッグに。
シンプルな装いに、少しだけ抜け感を加えたい日に。
使い込むほどに革が馴染み、持つ人の暮らしに自然と溶け込んでいく。
そんな存在になれたら嬉しく思います。
