【過去最大のトラブル発生】工房の引っ越しをします
こんにちは!
HushTugの生産責任者の川田大貴です。
モンゴルは先週から一気に寒くなり、最高気温-10℃前後という日々が続いています。オフィスの室温がかなり下がって室温が10℃となり、作業が出来ない状態になってしまいました。
今日はこの事件の経緯について詳しく書いていこうと思います。
【今のオフィスに引っ越すときの話】
今のオフィスには2019年8月15日に引っ越しをしました。
引っ越し前のオフィスの広さは50~60㎡くらいですので、職人10人が限界かなぁ〜と思っていました。なので7月から次のオフィスを探し始めました。
しかし、モンゴルは日本みたいにネットでサラッと見つけて、画像を見て、良さそうだから内見行くか、とはなりません。
入居者募集掲示板はあるのですが、画像は適当ですし(時々画像がない)不動産もほんとに少数の情報しか持っていません。
中々希望するオフィスが見つからないので、この辺に入りたいという地区を歩いて回ったこともあります。すでに人が入っていても、オーナーに手当り次第連絡するという荒業まで使いました(家賃滞納している会社が多いので)。
そんなことをしましたが、今のオフィスは結局掲示板で見つけて内見をしました。メインスペースが144㎡あり、すぐ隣の部屋も100㎡あるのでかなり広いし、ワンフロアなので条件はいい感じです。
場所がちょっと微妙かと思いましたが(中心部からは3~4kmほど外れる)、前のオフィスよりも鞣し工場が近くなるので良いかなと。
モンゴルの社会問題の一つに"渋滞"があるので、5km進むのに車で1~2時間かかるということが普通に起きます。なので毎月必ず行く鞣し工場から近いというのは、メリットが大きいのです。
内見の時に少し引っかかったことが、"暖房が見るからに古そうだから寒いんじゃないか"ということでした。オーナーに聞いてみたところ、「夏は涼しくて、冬は暑いオフィスです」とのこと。「もし冬にオフィスが寒かったとしても、それはオーナーの責任だから契約書に明記しておけば大丈夫か」と思い、契約書を作成して契約することに決めました。
ちなみにこの時に、144㎡と100㎡の全てと借りたわけではなく、144㎡を借りて100㎡は仮借りということで契約書を書きました。8月時点で244㎡を借りても持て余すと思ったからです。
- 仮借りしている間は100㎡のスペースは倉庫としてだけ使用します。(そこで仕事をしません、内装もしません。)
- 仮借り分の家賃を余分にお支払いします。
- もし僕らよりも先に100㎡を借りたい人が現れた場合は仮借りの契約を解消するので、どうぞ貸し出してください。
- 244㎡全てを借りる場合の料金は1㎡あたり13,000₮に設定します。
という条件で仮借りしました。もちろん上記の内容は契約書に盛り込んであります。また、契約時には"契約内容にお互いが合意したということを公的に証明してくれる機関(公証役場)"でサインをしました。
無事に契約を終え、オフィスの内装も必要最低限行い、引っ越しの日がやってきました。ミシンが使えなければ生産が止まってしまうのでなんとしても1日以内に引っ越ししたいと思っていました。
11時にトラック3台、作業員6人で来る予定が、11時の電話でトラックが2台に減り、11時半の電話でトラックが1台、作業員1人まで減りました(笑)
その会社は使えないということになり、その場で今から来てくれる会社を探すことに。正直、この時点で「あぁ、今日中の引っ越しは無理かぁ」と僕は心の中で思い、明後日以降の仕事について考えていました。
しかし、社員の頑張りのおかげでトラック2台、作業員4名を確保することができ、夜の21時までかかりましたがなんとか引っ越すことが出来ました!
引っ越しが無事完了し、電気は通っているので次の日から仕事を開始することが出来ました。
【今のオフィスの状態】
それで今のオフィスがどうなっているかと言うと、4ヶ月前の僕の発言が伏線になってしまいました…
10月に入ってからオフィスの室温が20℃前後に下がりました。少し肌寒いけど作業はできるという室温です。寒がりの職人さんとかは「寒いよー」と言っていたので、すぐにオーナーに言いました。(ちなにみモンゴルは10月から暖房が付きます。)
オーナーは「わかりました、確認しておきます」と。でこのやり取りを10月だけで4回以上しました。
それで先週から本格的に寒くなり、作業できる室温ではなくなり、もう待ちきれないので自分たちで専門の人を呼んで確認してもらいました。そしたら"地下から上がってくるはずの熱湯が来ていない"とのことで、地下を確認。そしたら前に借りていた会社がその熱湯を1階へ上げる管を切っていたとのこと。
これ呼んでから原因が発覚するまで2時間以内の出来事。僕は頭痛がしながら、オーナーに伝えたところ「そうだった、明日直します」と。
で火曜日に直すが水曜日に遅れ、木曜日の朝に部屋に行ってみたら、室温が12℃。
そう、室温12℃。
僕は社員の健康を考えて、2日間生産をストップさせていました。
これをオーナーに伝えたところ、「私達は熱湯の温度も上げたし、暖房も直したんだから、今度はあなた達が努力しなさいよ。」とのこと。
もう話にならないので、こちらから条件を提示しました。
- 電気ストーブを買って暖かくするので、ストーブ代と電気代は支払わない。
- 仕事ができる環境が整うまで引っ越しします。その分の家賃は支払いません。
- 3階を一時的に貸し出し、その間に1階をどうするか考える。
オーナーは3.を選んだので、バッグの生産は現状再開することが出来ています。狭いですがなんとかテーブルを運んで仕事してもらっています。
【オフィスの今後について】
では今後オフィスをどうしていくのという話に入ります。
僕の考えでは、今のオフィスを移動するというのは現実的にコストがかかりすぎるので、移動しない方法を一生懸命模索しました。
オフィスが寒いという問題は、明らかに僕らではなく(暖房を壊したわけではないので)オーナー側にあります。また、契約書にも"仕事ができる環境を整える"という明記があります。
契約違反をしているのは明らかにオーナー側なので、顧問弁護士を連れて再度話し合いの場を設けました。
僕からの要求は"オフィスの室温を25℃以上にする"この一点のみです。
この要求に対してオーナーからは「 電気ストーブを増やして暖かくしてください。ただ、電気代が著しく上がった場合は電気ストーブの使用を止めさせます。代わりにお湯の暖房を3つだけ増やします。」とのこと。
ちなみにこの"ストーブ3つ増やす"ということですが、3つ増やしたところで誰が見ても"絶対に室温変わらないよね"とツッコミを入れられます。つまり"意味がない"ということです。
また、仮借りしていたオフィスを12月から正式に借りてオフィスの拡大をしようということで、そっちの話も同時に進めていました。オーナーからしたら収入が増えるわけですから、メリットしかないはずです。
しかし、その暖房の話し合いの場で「オフィスを拡大する場合は1㎡あたり14,000₮になります」と言ってきました。
すかさず「いや、13,000₮という話で合意してて、契約書にも明記されてるし、あなたもサインをしているんですが。」と話しました。
僕は"あぁ、契約書に書いたこと忘れてしまっているのかな"と思いました。いえ、正確に言うと"単純に忘れてたということにして欲しかった"のです。
オーナーは「契約書にはそう書いてあるが、私はそんなこと言ってない」と言ってきました。
「契約書にはそう書いてあるが、私はそんなこと言ってない」
これはどういうことなんでしょうか?僕は数日経った今でも理解できません(笑)
流石にこの言葉を聞いた瞬間笑ってしまいました(笑)
いや、もう笑うしかなかったという方が正しいですね。
【モンゴルで契約違反はどう裁く?】
ではこの明らかな契約違反をどうするか、という話に移ることにしました。顧問弁護士にいろんな角度から質問しました。
結論としては"裁判をしたところで、半年〜1年の時間と、多額の弁護費用がかかるので引っ越しするのが一番の方法"とのこと。
悪いのはオーナーで、しかも僕らはこの4ヶ月間、なんの損害も被害も与えていません。むしろすごく優しくしてきました。それでも泣き寝入りするしかないという…
また、じゃあこちらが強硬手段(例えば勝手にストーブを増やして、電気代を払わないとか)を取ったところでオフィスの鍵を持っているのはオーナーなので差し押さえられてしまえばそれこそ全てが無駄になるという。
この状況が許されるのであればもはや契約書の意味がありません。
規模が大きければ、それなりの賠償金を請求できるので"裁判に意味がある→契約書に重みが出る"ということらしいです。
余談ですが、実は暖房事件の前にも一つありえない事件がありました。
【ゴムのり事件】
革と革や革と裏地など、貼り付ける際に"ゴムのり"というものを使用します。このゴムのりの匂いがまぁまぁ強烈な匂いを発します。
で、入居して2ヶ月が経ったころにオーナーから「匂いが2階の事務所まで来ているからなんとかしろ」と言われました。
僕らの工場は1階にあります。で2階にはサンドイッチ工場があります。オーナーがいる建物は工場とは別の建物になります(廊下は繋がっています)。つまり、オーナーのいる事務所まで匂いが行くわけが無いんです。
先にクレームが来るとしたら2階のサンドイッチ工場か、同じ1階の事務所からクレームが来るはずです。なので僕は普通に無視しました(笑)
そしたら今度はうちの社員に怒りをぶちまけたらしく、その後すぐに「サンドイッチ工場からもクレームが来てる」とのこと。
食品工場なので流石にそれはマズイなと思い、現場に直接話しを聞きに行きました。そしたらサンドイッチ工場の社長はそんなクレームは出してないとのこと。
「そんなクレームは出していない」とのこと。
その後、4階もオーナーの事務所なので4階に向かいました。まず入った瞬間に言われたのが「ほら、4階まで匂いが来てるでしょ?」
僕は鼻があまり利かないのでわかりません。じゃあ「どこから匂いがきてますか?」と聞いてみました。そしたら換気扇から来ているとのこと。
誰が見ても"その換気扇と私の工場は絶対に繋がってませんよ"というところにある換気扇。
「その換気扇と工場は繋がってませんよ」と何故かこちらが教えてあげたところ、オーナーは黙り込みました。
すかさず「サンドイッチ工場の社長はクレームを入れてないとのことでしたが、どういうことですか?」と畳み掛けました。
結局、違う話に話題を逸らされ、その後クレームを言ってくることがありませんでした。
【今後について】
オーナー・弁護士との話を終えて、僕はオフィスを移転することに決めました。
それは今のオフィスにいて、暖房の問題が解決したとしても、今後何かしら別な問題が起きると確信したからです。
オフィス探し、契約、引っ越し、現オフィスの引き渡し、と片付けなければいけないことが山積みですが、しっかり完了させて2020年を迎えたいと思います。
非常に悲しいですが、このような横暴なオーナーの意見がモンゴルではまかり通ってしまう現実があります。
法整備が追いついていない事実、若い世代(資本主義)と上の世代(社会主義)の考え方の違いなど、日本とは違った問題を抱えているのです。
ちなみにこの暖房事件の後のお話ですが、余計な2日間の休みのせいで生産が間に合わないという事態になりました。
僕が一切関わっていないところで、職人同士が話し合い「土日も出勤してなんとかみんなで完成させよう」ということで土日も朝から遅くまで働いてくれています。
それも職人の口から出てきたアイデアだそうです。
当然ですが、このように一生懸命頑張っているモンゴル人もいます。そしてHushTugにはそんな人達が集まってきてくれています。(いつも助けてくれてありがとう…!)
僕たちはモンゴルのこんな状況に負けず、HushTugの理念の一つである、消費者・生産者・社会・未来の四方に対してWIN-WINな状況を創り上げます。
そして「モンゴルに新しい産業を創る」というビジョンに共感してくれ、協力してくれている仲間や取引先と全力を尽くし、モンゴルから世界ブランドを創り上げます。
12月お届け予定のお客様は、到着予定日が遅れてしまって本当に申し訳ございません。モンゴルサイドでは出来る限り早く、そして最高の製品をみんなが全力で作っています。
商品到着までもうしばらくお待ち頂ければ幸いです。
そして、今後ともどうかよろしくお願い致します。
生産責任者 川田大貴