これまでの物語④
目次
HushTugに届いていた1通のメール
ロシアによるウクライナ侵攻、中国のゼロコロナ政策、円安、工場の後継者不足…。
自分たちだけではどうしようも無い問題の数々に悩んでいたとき、少し前に届いていた1通のメールを思い出しました。
「モンゴルのためだからモンゴルの工場でやらないと意味が無い。」
モンゴルでの工場運営を続けてきたHushTugとしては、モンゴルで生産を続けていく事を一種の誇りのように感じていました。
そうした想いから、以前は日本で縫製をしてもらう事を考えていませんでした。
「しかしこのままではブランドの存続自体が危うい。このまま潰れてしまったらモンゴルへの貢献どころか全てを無駄にしてしまう…」
なんとしてもブランドを存続させるために、ご連絡をいただいたハンドバック鈴木社とお話させていただく事にしました。
実際にお話させていただきわかったのは、日本の縫製技術の凄さ、そして縫製業界の深刻な現状でした。
日本の縫製業界は世界最高峰の技術を持っているにも関わらず、慢性的な後継者不足に悩まされていました。
平均年齢は70歳とも言われ、大規模な工場を除きほとんどが存続の危機に瀕していると言っても過言ではありません。
思えば、HushTugを創業したのもモンゴルのレザー業界、そしてその原因である貧困問題、環境問題を解決できないか?と考えたのを改めて思い出しました。
同時に、国や規模が違えど社会課題や業界の存続を解決したいという面で向いている方向は違わない。協力する事ができるのでは?とも感じました。
- 今モンゴルでの生産にこだわれば、ブランドの存続自体が危ない
- ブランドが潰れてしまえば、モンゴルレザーを使用した製品も流通しなくなりモンゴルの貧困や環境問題は加速していく
- 日本の縫製業界はすごい技術を持っているのに、存続の危機に瀕している
・・・・・・。
自分たちだけで、モンゴルだけで作るというプライドを捨てて、日本での生産を進める事にしました。
そこからは、モンゴルで最初にトートバッグを開発した時と同じように、ハンドバック鈴木社と試行錯誤を繰り返す日々が続きました。
ハンドバック鈴木社はハイブランドを含む数多くの製作実績・技術を有しており、製作できるアイテムの種類も大幅に増えました。
特に2022年夏頃にハンドバック鈴木社と開発したレザーサコッシュは、お客様との共同企画を日本製の高い技術で実現したアイテムです。
発売時だけで300件以上のご予約をいただき、その後も多くのお客様に選んでいただいています。
モンゴルでの生産が出来なくなり、日本での生産になった事で、もしかしたらこれまでのお客様の期待を裏切ってしまっているのかもしれません。
しかし私たちHushTug自身は、日本での生産を「今後もモンゴルへの貢献を続けていくための新たなステップアップ」であると感じています。
現在はさらに高品質なレザーによってより良い製品を作るため、日本最高峰の姫路レザーを使用している製品もあります。
しかし、今後も一部商品にはモンゴルレザーを使用し続ける事で、モンゴルのレザー業界、そしてその輸出を通じた社会課題の解決を手助けできればと考えています。
例に挙げたサコッシュのように、これまで以上に高品質なレザー製品を生み出すことが出来るようになり、ブランドとして進化を遂げた姿を今後もお客様にお見せできればと思っています。
これまでの物語、これからの物語
これまでの物語を読んでいただき、ありがとうございました。
HushTugが誕生したとき。20代のノウハウも知識も経験も人脈もない若者が言語の通じないゼロからブランドを創ると決めたとき。
多くの人から「無謀なこと」「成功しないから、やる意味のないこと」「レザー業界はライバルが多いから儲からない」と反対や白い目で見られました。
しかし困難だからこそ、誰もやらないことを国を越えて人種関係なく全力で取り組み成功させる。国が抱える社会課題、そして日本の縫製業界を変えていく。これだけ大きなことだからこそ、挑戦する意味があると僕は信じています。
そしてHushTugを通じて、自分たちの価値観や挑戦する姿勢を発信し「彼らでも出来るなら私でも出来るんじゃないか?」「私も何かやってみよう!」と何かを始める方が1人でも増えれば嬉しいです。
社会や誰かの問題を解決できる人が増えれば世界はもっと豊かに、もっと幸せになると信じています。
同時にHushTugを通じて産業が盛り上がれば、社会の課題を解決する可能性だってあります。
「作り手」と「ユーザー」と共に成長するブランド。それが「HushTug」です。
活動の記録は、随時このページに追加していきます。
この物語はまだ始まったばかりです。今後も職人と社員と力を合わせて沢山の困難を乗り越えていきます。これからの僕たちの物語を見守って頂けますと幸いです。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
HushTug代表 戸田貴久